機械の中の幽霊に怯えるのはもうやめよう!

Author: Guy Pearce, CGEIT, CDPSE
Date Published: 20 September 2022
English

「人間は機械の中の幽霊である」とは、これまでに作られたすべての自動装置、機械、コンピューターの中で、人間は独立した存在であることを意味します。そうでないなら、2004年の カルト名画「アイ、ロボット」で予言されたロボッ ト黙示録は、わずか13年先の未来の予兆なのでしょ うか?1

いずれにしても、機械は人間を犠牲にしてますます多くの仕事を奪い続けます。事業体の人に対する価値観や、21世紀に機械が加速度的に勃興する中で従来の事業体が構造を維持する方法によって、状況はさらに悪化しています。

デジタルネイティブの事業体は、今日の機械を動かす近代コンピューティングが勃興するはるか前に初めて実践され、過去の亡霊に取り憑かれ、時代遅れとなった組織設計のパラダイムに比べ、従業員を組織化するよりよい方法があることを仕組みを見つけました。

現在、デジタルまたは別の形で存在するすべての機械は、人間の命令を実行していますが、一方で、偏見などの人間を制限するものと同じ多くのものに悩まされています。

背景

「機械の中の幽霊」が英語の慣用句になるよりずっと前、この言葉は、イギリスの哲学者ギルバート・ライルがフランスの哲学者であり数学者のルネ・デカルト2 の著作を説明するために用いた軽蔑的な言葉でした。デカルトは、自ら設計し構築した自動装置として知られる機械に単なる興味以上の感情を抱いていました。3

精神と肉体の関係を探求する過程でデカルトは、精神は形而下のものではないと提唱しました。精神は脳から独立した存在であり、肉体は本質的に生物学的自動装置であると主張したのです。機械には人間が持つ「心」がないという考え方は、チューリングテスト(コンピューターが人間と区別できないように思考し、行動することができるかどうかを評価する伝統的手法)の基礎です。4 ところが、ライルはデカルトの心身二元論を「機械の中の幽霊」と断じ、精神は脳に依存すると主張しました。5

精神が肉体から独立して存在するかどうかについては、ここでは論じません。問題は、人間と機械の関係の本質です。1863年、イギリスの作家サミュエル・バトラーは、機械が超人類6 として人間を凌駕す る日が訪れると記し、その日のことは現在では技術的特異点と呼ばれています。7 現在、デジタルまたは物理的に存在するすべての機械は、人間の命令を実行していますが、その一方で、偏見などの人間を制限するものと同じ多くのものに悩まされています。

脱工業化経済へのシフトは、脱工業化事業体の組織設計の要件に関する新しい考え方の必要性を促進しています。

機械

技術、機械または自動装置について論じるとき、技術は人間よりもはるかに多くのことができると信じて構いません。ブロックチェーン技術のスマートコントラクトは、サプライチェーン契約を処理します。ソフトウェアがITガバナンス、リスク管理、コンプライアンス(GRC)ポリシーを成立させます。人工 知能(AI)で動くロボットは、銀行来店者と取引について知的な会話をしているように見えます。大手の小売店では、機械がPOS端末でチェックアウトの行列に対応しています。人間ができることなどもう残っていないかのように見えます。自動運転車では、ハンドル、アクセル、ブレーキペダルの操作、A地点からB地点へ行くために必要なすべてのセンサー入力さえ自動化しました。

イギリスの数学者チャールズ・バベッジとエイダ・ラブレスが現代に生きていたら、コンピューターベースのオートメーションなど目新しくないと主張するでしょう。バベッジの解析エンジン(コンピューター)と、そのエンジンで演算を可能にしたラブレスのパンチカード(プログラム)のおかげで、技術は200歳を迎えました(図表1)。したがって、オートメーションは「経済と労働力を変革する世界的な力」8 になるという最近の主張は、この変革にすでに長い歴史があると考えれば、興味深い未来観といえます。

出典:Based on Institute of Chartered Accountants in England and Wales, (ICAEW), “History of Blockchain,” https://www.icaew.com/technical/technology/blockchain-and-cryptoassets/blockchain-articles/what-is-blockchain/history#:~:text=Blockchain%20has%20the%20potential%20to,the%20pseudonym%20of%20Satoshi%20Nakamoto; Foote, K. D.; “A Brief History of the Internet of Things,” Dataversity, 14 January 2022, https://www.dataversity.net/brief-history-internet-things/; Perry, D. G.; S. H. Blumenthal; R. M. Hinden; “The ARPANET and the DARPA Internet,” Library Hi Tech, vol. 6, iss. 2, 1 February 1988, https://www.emerald.com/insight/content/doi/10.1108/eb047726/full/html?skipTracking=true; Anyoha, R.; “The History of Artificial Intelligence” Harvard University, The Graduate School of Arts and Sciences, Cambridge, Massachusetts, USA, 28 August 2018, https://sitn.hms.harvard.edu/flash/2017/history-artificial-intelligence/; Stanford Computer Science, “Robotics: A Brief History,” Stanford University, California, USA, https://cs.stanford.edu/people/eroberts/courses/soco/projects/1998-99/robotics/history.html#:~:text=The%20earliest%20robots%20as%20we,industry%2C%20but%20did%20not%20succeed; The Editors of Encyclopedia Britannica; “Personal Computer,” Encyclopedia Britannica, https://www.britannica.com/technology/personal-computer; Staff, “Generations, Computers” Encyclopedia.com, https://www.encyclopedia.com/computing/news-wires-white-papers-and-books/generations-computers; The Editors of Encyclopedia Britannica; “Charles Babbage,” Encyclopedia Britannica, https://www.britannica.com/biography/Charles-Babbage; History.com Editors; “Morse Code and the Telegraph,” History.com, 6 June 2019, https://www.history.com/topics/inventions/telegraph#:~:text=Developed%20in%20the%201830s%20and,a%20wire%20laid%20between%20stations

例えば、オートメーションはすでに経済を変革し、「手工業から大量生産へ、ブルーカラーからホワイトカラー、「ニューカラー」の仕事へと、仕事の質向上、賃金の上昇、雇用の増加、生活基準の向上につながりました」。9 また、オートメーションはすでに数世紀にわたり労働力を変革してきました。例えば、 16世紀(靴下)、19世紀(織物)、20世紀(自動車製造)などが挙げられます。10 ジャカード織機(パンチカードを使用して地紋を自動化)による19世紀の自動織機は、バベッジの解析エンジンに着想を与え、ラブレスのパンチカードのメカニズムは150年後のコンピューターをプログラミングしていました。

脱工業化経済へのシフトは、脱工業化事業体の組織設計の要件に関する新しい考え方の必要性を促進しています。

図表1に示すように、ロボットとAIは1950年代から存在し、仕事の性質に影響を与え続けています。公衆インターネットは、オフィスの連絡と郵便サービスの性質を変え、想像をはるかに超える大きな機能へと成長し、良い結果も悪い結果ももたらしています。モノのインターネット(IoT)(例えば、センサー技術)は、20世紀末に登場し、最近は自律型サプライチェーン物流の分野などで発展しています。21世紀初頭にブロックチェーンが登場すると、法務契約書のコンプライアンス自動化などにより、すでに影響を与えています。コンピューターは、AIとロボットがより人間に近く進化しながらオートメーション革命を主導し続け、。オートメーションは、今後も経済と労働力を変革し続けるでしょう。

今日でも、ITはオートメーションに利用されています。スマートコントラクトは、手動による契約書の検証を自動化したものです。GRCソフトウェアは、そうでなければ手動で実行する他ないITポリシー要件を満たす手順を自動化します。ロボットが銀行の窓口業務を自動化し、機械が小売店の精算処理を自動化し、自動運転車は運転を自動化します。これらは、現在使用されている機械の一例に過ぎません。

幽霊
何を自動化するか、どのようにしてオートメーションを導入するかについては、今でも人間が担当しています。人間がスマートコントラクトを開発し、人間がその仕組みを定義します。人間がGRCソフト ウェアを書き、ソフトウェアが処理するイベントを決定します。人間がロボットをプログラムし、ロボットが話す言語を決めます。人間が小売店のPOSマシンをインストールしてメンテナンスし、レシートの紙を補充する単純作業を行います。人間が自動運転車に必要なセンサー装置を製造し、それを点検するためのルーチンを開発します。

(メインフレームに比べ)アクセスしやすくより使いやすいパーソナルコンピューター(PC)技術の導入により、タスクオートメーションが増加し始めました。

人間と機械の重要な違いの1つは、人間はさまざまな状況を理解し、状況に合わせて行動する能力を持っていますが、機械にはその能力がないことです。11言い換えると、人間は変化に対応できますが、機械は対応できません。閉ループシステムでは、機械はサイクル内のフィードバックループによって限られた数の変化に対応できます。しかし、機械がシステムの当初の仕様の境界線を越えた環境で適切に動作できるようにするには、原則として人間が設定を変更する必要があります。

AI(より具体的には、AIのサブセットとしての機械学習(ML))をベースにした機械は、モデルの基礎データの変更に対応できるという意見があるかもしれません。しかし、運用環境やモデルの変更による基礎データの変更は、モデルドリフトを引き起こしています。つまり、モデルは、当初設計および試験された環境を適切に反映しない可能性があります。したがって、MLマシンでさえ、人間の介入なしではすべての状況でそれ自体を変更したりテストすることはできません。

最も現代的な事業体にあっても、人間が原動力なのです。人間なしでは、機械は変化する状況に合わせて対応できないため、社会に対する価値を失います。機械がなくても、人間は昔のように環境に合わせて生き残るでしょう。人間は今でも機械の中の幽霊です。

機械の時代の働く幽霊

労働の歴史は、狩猟採集や遊牧から、12,000年前に始まった農業革命による職業の確立、つまり18世紀の工業労働のブルーカラー、20世紀、21世紀のサービス産業のホワイトカラーまでの人類の道のりと要約できます。12 ブルーカラーからホワイトカラー、ニューカラーへの労働の推移における傾向を反映し、1911年にカナダの労働人口に占めるサービス業従事者の割合は約3分の1でしたが、1987年までにその割合は約3分の2に達し13、遷移の規模の大きさを示しています。この例は、新しい組織設計思想をポスト工業化経済に適合させる必要性を如実に示しています。

ここ10 年間だけでも急速な技 術の発展により、組織のアジリティに大幅な向上が求められるようになりました

コンピューター化は、第2世代コンピューター(第1世代コンピューターのバルブではなく、トランジスターを使用するコンピューター)によって1960年代に職場に導入され、「会計のほか、給与、人員、在庫記録の処理」に重点的に利用されました。14 (メインフレームに比べ)アクセスしやすくより使いやすいパーソナルコンピューター(PC)技術の導入に伴い、タスクの自動化が増加し始めました。コンピューティング技術の影響は、組織のすべてのレベルで情報の利用可能性が高まることを前提とした、低レベルおよび中レベルの事務作業の削減や、新しいタイプの作業の導入が含まれます。15

コンピューティング技術は、ワークフロー、仕事の内容、職責に大きな影響を与えました。1960年代以降、例えば、組織構造は、演算と報告を促進するコンピューターセンターによって影響を受けてきました。16 もし事業体が60年前に変化を経験していたら、1950年代以降に成熟してきたAIを含む新しい世代の新興技術は、21世紀の組織設計にどのように影響を与えたでしょうか?

機械そのものに関しては、完全にロボット化・自動化された生産はまだ実現していません。第1世代の産業ロボットは、作業を反復する作業環境が同一である場合にのみ、単純作業を確実に実行できました。コンピューターサイエンティストやエンジニアは、環境の差異を管理するためにより感度の高いロボッ トを開発しましたが、人間が引き続きロボットの生 産性を支援し維持する必要があることは、人間が機械の中の幽霊であるということを今も明確に想起させます。17

ポスト工業化の機械が出現し、中には以前からある作業に関する新型も登場している状況において、より効率的に仕事を行うには、人間はどのようにして人間をとりまとめ行動すればよいでしょうか?

古い幽霊が新しい幽霊を悩ませるという問題

組織の機能設計(例えば、財務部門)や部門設計(例えば、大手銀行の個人向けバンキング部門)は、それぞれ1908年および1925年の遺物ですが、組織設計で現在最もよく議論される話題はさらに古いです(図表2)。 18


Adapted from Denison, D. R.; A. Narasimhan; M. J. Piskorski; “Designing a High Performance Organization,” IMD, March 2015, https://www.imd.org/research-knowledge/articles/designing-a-high-performance-organization/

組織文化(毎日の職場に見られる規範と行動)は696年に起源を持ちます。19 知識や知的財産の管理は、 1149年には組織的特徴でした。一方、プロジェクトベースチームは16世紀から話題に上り、マトリックス組織は1969年から存在しています20図表2)。いくらか現代寄りなのは、自己管理チームと顧客中心主義で、それぞれ1971年、1992年頃に登場しました。21 しかしながら、ここ10年間だけでも急激な技術の発展により、組織のアジリティに大幅な向上が求められるようになりました。したがって、これらの構造のいずれかは(最も新しくても30年前ですが)、21世紀の人間と機械の作業を管理するために必要なスケーリング、多様性、応答性に対応する役割を果たせるでしょうか?

この疑問に答えるには、社会の中における人間を時系列で分析する必要があります。仕事に与える社会的影響は、ある階級の他の階級に対する搾取(成果または処罰)として定義できることを意味します。22 機能的には、複式簿記と最初の近代的事業体は、ルネサンス時代(16世紀から17世紀)に存在し、産業革命(18世紀から19世紀)がホワイトカラー(知的作業)とブルーカラー(肉体作業)の区別をもたらしました。これらの言葉は今でも使用されています。23 職業は19世紀に官僚制度として、ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーによって紹介されました。彼は、今日でも存在する構造化・様式化された人間味のない階層型組織の種類を説明しました(図表3)。24

アメリカの機械技師フレデリック・テイラーは、人間の効率性と生産性に焦点を当てた科学的管理を紹介しました。以来、組織の効率性と生産性を達成する上で、オートメーションは重要な要素となっています。ヴェーバーとテイラーの研究は100年後も存続していますが、最も現代的な組織構造である顧客中心主義は30年前のものです。

境界を超えて精神(幽霊)世界に足を踏み入れてから久しい人々による思考に基づいて、仕事のために人員を組織化する方法は時代遅れです。

このような問題を目にするのは珍しくありませんが、最も現代的な一般的組織設計パターンまたは管理のパラダイムでさえ、現在絶対的に優勢な技術に比べ古すぎる場合、21世紀の人間の組織要件を満たし、コンピューター開発の急激な速度に遅れないようにするにはどうすればよいでしょうか?仕事の定義と組織的官僚制の定義は、コンピューターオートメーションおよび第3次産業/第4次産業の発展の前に登場していました(図表3)。それから何が変わったのでしょうか?組織のパラダイムとしての顧客中心主義は、サービス業のホワイトカラーと知識産業のニューカラーが拡大している時代に新しく登場しました。

事業体はいまだ大部分が、100年前の工場のような部署と機能が整備された構造であり、ますますデジタル化が進む世界で、増加するサービス業就業者にとっておそらく今なお最善の構造であると暗黙的に示しています。境界を超えて精神(幽霊)世界に足を踏み入れてから久しい人々による思考に基づいて、仕事のために人員を組織化する方法は時代遅れです。これは、古い幽霊が機械の中の新しい幽霊を悩ませている事例です。

古い幽霊を退散させる

オフショアリング、アウトソーシング、自宅勤務、クラウドソーシングなどの業務形態(すべて比較的最近の概念)には新しいスキルが求められ、結果的に仕事と雇用の構造に影響を及ぼします。25 これらの要素のいずれも、現在の時代遅れになった組織構造パラダイムの設計に影響を与えるために整備されたものではありませんでした。同じことがオートメーションにも言えます。人とロボットとの現代の仕事関係(例えば、自動車の組み立てラインなど)を観察すると、人は常に新しい資格や能力を習得する必要があります。システムインテグレーターやロボットメーカーは、新しい技術が社会に与える影響を考慮することは滅多になく26、組織への影響など気にも留めないからです。

オートメーションの進化の速度よりも人間の変化の速度の方が遅いという事実は、バトラーが150年前に提唱した特異点27 に関する考え方に現代的背景を提供します。技術力が飛躍的に高まる中、人間の変化が遅いことは、人が考えるよりも技術的特異点仮説が近づいていることを意味するのでしょうか?

21世紀にオートメーションから発生しているその他の仕事および構造に関連する問題は、以下のとおりです。28

  • 低スキル、低学歴の労働者は、オートメーションに職を奪われます。これは、特に、女性、若者、老人、未就学労働者にとっては、これからも職場の不平等をもたらすでしょう。
  • 技術の発展に伴い、これまでは低スキル、低学歴労働者が担っていた手作業の仕事も、機械で行われています。これは、新しい技術が、ルーチンよりもますますスキルに偏り、すでに不利な条件の労働者の仕事が消滅の危機にあることを意味します。
  • 高スキル労働者の反復性と標準化が大幅に増加し、オートメーションがこれまで経験的知識に基づいた非定型作業でさえも一般化していることを示唆しています。

古い幽霊で構造化された事業体は、すでにデジタル化している、いわゆるデジタルネイティブな事業体の特質とは対照的に、市場とのつながりを維持する ためにデジタルトランスフォーメーションが必要です。デジタルネイティブな事業体は、最初からデジタルとして出発しているため、デジタルトランスフォーメーションを経てデジタル化する必要はありませんでした。

デジタルネイティブな事業体の特徴は以下のとおりです。

継続的な実験、学習、適応が組織のDNAに埋め込まれています。既存の市場を取り込み、新しい市場を生み出すため、人材と投資を呼び込むため、デジタルイノベーションの継続的サイクルを築いてきました。29

デジタルネイティブな事業体は、「顧客や製品を中心に考え、事業体の技術を実現手段として、意図的に全従業員イノベーションを起こす力を与えている」ところが重要な要素です。30

デジタルネイティブな事業体と従来の事業体を分ける多くの要素があります(図表4)。31 従来の事業体がデジタルトランスフォーメーションを成功させるには、仕事をデジタルで実行することに関して能力、機能、構造を十分に考慮する必要があります。ただし、組織の能力と機能を超えて、組織の設計と構造は、事業体全体でデジタルワークが適切に分配され、重複、説明責任と実行責任の明確化、柔軟性が確実に管理されなければなりません。32 現在の多くの組織の課題は、図表4の右列に表示された現代的組織の組織としての需要を統合することで、図表4の左列に表示された古い組織構造を進化させることです。

結論

従来の事業体がスキルセットを重視するか、マインドセットを重視するかで悩んでいるのは、従業員にとって明るい兆しではありません。スキルを備えた労働者はオートメーションの対象となっているからであり、大手国際マネジメントコンサルティング企業では、より大きな生産性と効率性を求めてオートメーションを推進し続けています。

スキルが必要な職種に就いている人が今後も雇用を確実に維持するには、スキルを高めるだけではなく、イノベーションの考え方(例えば、顧客中心主義や、今のところ機械で再現することが難しい組織文化概念である失敗を管理することによる安らぎ)を促進することを意味します。スキルを伸ばすことだけに注力しても、機械との競争、引いては特異点との争いに敗れてしまう可能性があります。

組織文化は1300年前のパラダイムです。デジタルネイティブな事業体は、構造に柔軟性があるだけではなく、明確な階層なしに、必要に応じて他のチームと連携します。16世紀のチームベース構造は、従来の事業体と現代的な事業体との極めて分かりやすい差別化要因です。従来の事業体の持続可能性にとって、旧弊な構造と経営のパラダイムが意味することは重大です。

事業体は多くの理由でデジタルトランスフォーメーションの推進を決定します。しかし、従来の事業体は八方塞がりの状況に陥っています。変化すれば、無関係になるリスクがあります。変化しなければ、レガシーシステム、旧来のプロセス、旧来の考え方の相互に結びついた状況を舵取りする必要性に関連するリスクが大幅に高まります。この発見が意味するのは、確立された従来の事業体がデジタルトランスフォーメーションを推進する場合、積極的なリスク管理が不可欠であるということです。

スキルが必要な職種に就いている人が今後も雇用を維持するには、スキルを高めるだけではなく、イノベーションのマインドセット促進を確保し ます。

デジタルネイティブな事業体が自ら作り出したデジタルマシンに関してマインドセットを重視するのは、デカルトの精神と自動装置の違いを想起させます。デカルトの提言はまったく見当外れではなかったようです。ライルの「機械の中の幽霊」という軽蔑的な言葉はまさしく、デカルトの400年前の思索の力と持続性への祝杯を上げました。結局のところ人間は、成長と発展を損なう古い幽霊に取り憑かれた組織構造によって阻害されなければ、より効率的になり得ます。古い幽霊は注意を払えば退散させられます。少なくとも予測可能な未来までは、人間は機械の中の幽霊としてその地位を維持できます。

後注

1 Proyas, Alex; I, Robot, 20th Century Studios, Los Angeles, California, USA, 2004
2 Ather, S. H.; “A History of Artificial Intelligence,” https://ahistoryofai.com/descartes-2/
3 Ibid.
4 Ibid.
5 Grammarist, “Ghost in the Machine,” https://grammarist.com/idiom/ghost-in-the-machine/
6 Danaylov, N.; “17 Definitions of the Technological Singularity,” Institute for Ethics and Emerging Technologies, 22 August 2012, https://archive.ieet.org/articles/danaylov20120822.html
7 Kurzwell, R.; “Singularity: Explain It to Me Like I’m Five-Years-Old,” Futurism, 3 March 2017, https://futurism.com/singularity-explain-it-to-me-like-im-5-years-old
8 Edlich, A.; G. Phalin; R. Jogani; S. Kaniyar; Driving Impact at Scale From Automation and AI, McKinsey, February 2019, https://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/Business%20Functions/McKinsey%20Digital/Our%20Insights/Driving%20impact%20at%20scale%20from%20automation%20and%20AI/Driving-impact-at-scale-from-automation-and-AI.ashx
9 Fitzpayne, A.; C. McKay; E. Pollack; Automation and a Changing Economy: The Case for Action, Future of Work Initiative, Aspen Institute, USA, 2 April 2019, https://www.aspeninstitute.org/publications/automation-and-a-changing-economy-the-case-for-action/#:~:text=Automation%20helped%20move%20us%20from,jobs%2C%20and%20better%20living%20standards
10 Fleming, S.; “A Short History of Jobs and Automation,” World Economic Forum, 3 September 2020, https://www.weforum.org/agenda/2020/09/short-history-jobs-automation/
11 Prabhat, S.; “Difference Between Human and Machine,” Difference Between Similar Terms and Objects, http://www.differencebetween.net/miscellaneous/difference-between-human-and-machine/#ixzz7Reph9y7K
12 Holmer, A.; “A History of Work: Livelihood, Vocation, and Labour,” WorkMatters, 10 April 2020, https://medium.com/workmatters/the-history-of-work-livelihood-vocation-and-labour-32196fe41c54
13 Phillips, R. A.; “Service Industry,” The Canadian Encyclopedia, 4 March 2015, https://www.thecanadianencyclopedia.ca/en/article/service-industry
14 Stanback, T. M., Jr.; Computerization and the Transformation of Employment, Routledge, USA, 1987, https://www.routledge.com/Computerization-And-The-Transformation-Of-Employment-Government-Hospitals/Stanback/p/book/9780367163570
15 Ibid.
16 Ibid.
17 Kransberg, M.; M. T. Hannan; “Automation,” Britannica, 1 November 2021, https://www.britannica.com/topic/history-of-work-organization-648000/additional-info#contributors
18 Denison, D. R.; A. Narasimhan; M. J. Piskorski; “Designing a High Performance Organization,” IMD, March 2015, https://www.imd.org/research-knowledge/articles/designing-a-high-performance-organization/
19 Ibid.
20 Ibid.
21 Ibid.
22 Caredda, S.; “Part 1: A Brief History of Work,” Sergiocaredda.eu, 18 October 2020, https://sergiocaredda.eu/people/future-of-work/part-1-a-brief-history-of-work/
23 Ibid.
24 Ibid.
25 Ozkiziltan, D.; A. Hassel; “Humans Versus Machines: An Overview of Research on the Effects of Automation of Work,” SSRN, 8 August 2020, https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3789992
26 Ibid.
27 Ibid.
28 Ibid.
29 Watt, M.; “How Digital Natives Are Influencing Traditional Organizational Design,” EY, 22 July 2020, https://www.ey.com/en_gl/workforce/how-digital-natives-are-influencing-traditional-organizational-design
30 Ibid.
31 Ibid.
32 Pearce, G.; “Attaining Digital Transformation Readiness,” ISACA® Journal, vol. 1, 2020, https://www.isaca.org/archives

ガイ・ピアス | CGEIT, CDPSE

コンピューター科学と商業学を学び、戦略的リーダーシップ、ITガバナンス、事業体ガバナンス、主に財務サービスに携わりました。1999年からは、デジタルトランスフォーメーションに積極的に関与し、効果的な導入を確保するため、新たに出現する技術の人とプロセスを組織に統合することに注力しました。1989年、ピアスは初めて人工知能(AI)に触れ、以来数十年はシンボリックAIから統計的AI領域への進化を追究しました。ITガバナンスへの貢献により、「2019 ISACA® Michael Cangemi Best Author」アワードを受賞し、現在は、デジタルトランスフォーメーション、データガバナンス、ITガバナンスのコンサルティングを行っています。